**Tor**(The Onion Router)は、インターネット上で匿名性とプライバシーを保護するためのフリーソフトウェアおよびオープンネットワークです。Torを利用することで、ユーザーは自分のIPアドレスを隠し、追跡されることなくウェブサイトにアクセスしたり、オンライン活動を行うことができます。
### Torの仕組み
Torの名前は「玉ねぎルーティング」から来ており、通信データが複数の暗号化レイヤー(玉ねぎの皮のようなもの)で保護されていることに由来します。Torの仕組みは次の通りです:
1. **多層暗号化**:
– Torクライアントは、ユーザーがアクセスしようとする目的地に到達するまでのルートをランダムに選択し、通信データを複数の中継ノード(リレー)を経由させます。
– 通信データは出発時に多層暗号化され、各リレーでその暗号化の1つの層が剥がされます(例: 最初のノードが外側の層を剥がし、次のノードがその次の層を剥がす)。このプロセスにより、どのノードも送信元と目的地の両方を知ることができません。
2. **リレー(中継ノード)**:
– Torネットワーク内には、世界中に分散された何千ものリレーが存在し、これらが通信の中継を行います。
– 通常、データは3つのリレーを通過します:エントリリレー(入り口ノード)、ミドルリレー(中間ノード)、エグジットリレー(出口ノード)。
3. **匿名性の保証**:
– 最終的に、エグジットリレーを通じて目的地にデータが届きますが、エグジットリレーが通信の発信元を知ることはできません。
– また、目的のウェブサイトも、ユーザーがアクセスに使用したIPアドレスはエグジットリレーのものであり、ユーザーの本来のIPアドレスは隠されたままとなります。
### Torの利用目的
1. **プライバシー保護**:
– Torは、オンラインでのプライバシーを守りたい人々に広く利用されています。たとえば、追跡型広告やウェブトラッカーを避けるために使われます。
2. **検閲回避**:
– 政府や組織によるインターネット検閲を回避するために利用されることもあります。特に、自由なインターネットアクセスが制限されている国々で重要な役割を果たしています。
3. **匿名のコミュニケーション**:
– ジャーナリスト、活動家、通報者などが、匿名で情報を伝えるためにTorを利用しています。
4. **暗号市場と違法活動**:
– 残念ながら、Torは違法な取引や活動にも利用されることがあります。たとえば、違法な商品の取引や不正なサービスの提供が行われるマーケットプレイスなどが存在します。
### 利点とリスク
– **利点**:
– **プライバシー保護**: ユーザーのIPアドレスが隠され、追跡や監視から守られます。
– **検閲回避**: ネット検閲が厳しい地域でも、自由に情報にアクセスできるようになります。
– **リスク**:
– **速度の低下**: 通信が複数のリレーを経由するため、通常のインターネット接続に比べて遅くなることがあります。
– **エグジットノードのリスク**: エグジットリレーを経由するデータは暗号化されていないため、悪意のあるリレーが存在する可能性があります。これにより、エグジットノードでデータが盗聴されるリスクがあるため、重要な情報の送信には追加の暗号化(HTTPSなど)が推奨されます。
– **違法活動の関与**: Torネットワーク上で行われる違法活動に巻き込まれるリスクもあるため、利用には注意が必要です。
### Torの使用方法
Torを利用するためには、**Tor Browser**という専用のブラウザをダウンロードして使用するのが一般的です。このブラウザはFirefoxをベースにしており、デフォルトでTorネットワークを通じて接続が行われるように設定されています。
Torはインターネットでのプライバシー保護に非常に有効なツールですが、利用にはリスクも伴うため、注意深く使用することが重要です。